【Story】
舞台は十九世紀末。ウクライナのとある田舎。若くて明るい教師・レオンはクリエンチコフ村の教師としてやってくる。 彼は人々に教育を施すという使命に燃えていたが、すぐに村の奇妙な様子に気づく。 魚屋が花を売り、郵便は宛先に届かず、「愛なんてものはない」と村人たちは言い切るのだ。 二百年前にかけられた奇妙な呪いにより、彼らは愚かで理性を欠いた状態になっているのだという…… レオンは知性と理性をもたらすヒーローになり得るのか…！？


【Introduction】
ニール・サイモンは、ヒューマンコメディの作家と自負し、人間を書き込む作風が持ち味である。 また都会を舞台に笑いだけではない家庭劇を書く作家として知られている。 作品は人間の心の機微を描いた、暖かな余韻の残るものが多い。 しかし「フールズ」は、全く違う筆致で描かれた異色作といえる。 物語はお伽話的で色合いは多彩。登場人物は生半可なリアルな造形では成立しない。 しかしナンセンスともいえる世界観を成立させた、サイモンの凄みを感じ取れる見逃せない作品である。